Nationals Nation

マックス・シャーザー、スティーブン・ストラスバーグ、タナー・ロアーク、ダニエル・マーフィー、ブライス・ハーパー、トレイ・ターナー、マイケル・コペック、イチロー、ワシントン・ナショナルズ、佐倉絆ちゃん、友田彩也香ちゃん、星美りかちゃん、天使もえちゃん、鈴村あいりちゃん、大橋未久ちゃん、石原莉奈ちゃん、戸田真琴ちゃん、音市美音ちゃん、波多野結衣ちゃん、かさいあみちゃん、アタッカーズ、橋本環奈ちゃんについて語る星鈴のブログです。

カテゴリ:その他 > 想い出がいっぱい

5
s-DSC00595

「絵にかくとすれば、こうか……」
林豪は懐紙をとりだし、しばらく構図を考えていたが、やがて三度筆をうごかして奇妙な図をかいた。───図のなかの男は誤って断崖から落ちたらしい。ところが、崖の途中に若松があり、それをつかんだ。下は千尋の谷底である。と、林豪は筆を放して、
「若松をつかみはしたが、崖の上にのぼれる見込みはまったくない。見込みがないくせに松にしがみついている。いつか、力が尽きて下へ落ちるだろうが、とにかく懸命にしがみついている。どうじゃ、苦しげにみえぬか」
「林豪どのなら、この男にどう声を掛けるか」
「松を放せという」
「落ちるではないか」
「あたりまえじゃ。落ちろとわしはいう。盛親どのだけではなく、世のだれもが、このような益体もない松につかまって苦しんでいる。手を離せば、なるほど谷底へ落ちよう。死ぬかもしれぬし、生きるかもしれぬ。
死ぬにせよ、生きるにせよ、人間さしたることはないと目ざめたとき、手を離す一大勇猛心がおこるのじゃ。手を離した瞬間、無碍自在の境地がひらけよう」


ずっと前、私は博多駅のアニメの専門学校の前を通った。
その学校では学園祭が開かれているらしく、学生たちが笑顔で出てきた。
その笑顔を見ると、私はひどくみじめな気分になった。

「いいなぁ、あいつらは。自分の好きな道で仕事できて素敵な人生を歩んでいくんだろうな」

私はプログラマーだった。
大学を卒業して、私は信用金庫に就職した。
一見、華やかそうな金融業だけど、旧態依然とした体質に嫌気が差し、私は自分の力で稼げるようになろうと思ってプログラマーを目指した。
面接のときには「頑張ったらこれくらいは稼げるよ」といわれ、最初は給料も安いけど頑張ってみようと思って転職したのだった。

しかし、それは口約束だった。
就職してみれば、誰もそんな給料をもらっておらず、残業手当すら出ないブラック企業だったのだ。
同じ時間コンビニでバイトした方がはるかにマシという薄給で、朝から深夜まで仕事だった。


私は同人作家だった。
しかし、同人誌は売れず、100冊印刷した同人誌が1冊しか売れないこともあった。

私は子供の頃から母親に虐待されていた。
母は私を連れて男と駆け落ちした。
母は義父の母、つまりは私の義理の祖母と折り合いが悪く、ストレスがたまるたびに私をそのストレスのはけ口にした。
木刀で叩かれて全身紫に腫れ上がった。
靴ベラで叩かれ、皮膚が裂けて血まみれになった。

私が泣けばさらに暴力はエスカレートした。
何が悪いかわからないけど、私が謝ってもさらに暴力はエスカレートした。
虐待をいちばん早く終わらせるのは黙って耐えることだった。
どんなに痛くても声を出してはいけない。
泣いたり痛いといえば、あの女はさらに激高して激しい暴力を振るうのだ。


こんな思いをするなら、何で生まれてきたのだろうと何度も思った。
生まれてこない方が良かったと何度も思った。

そして、妹が生まれた。
妹は義父の子供だった。
妹を虐待すれば、義父の報復が待っていた。
だから、狡猾なあの女は盾になってくれる人が誰もいない私だけを虐待したのだ。
それは、誰も助けてくれない暗闇だった。


私なりに頑張ったつもりの同人だったけど、同人誌は売れず、ここでも私は必要とされてないのだと思った。
会社も朝の9時から夜の10時まで仕事で、同人を描く暇もなかった。
そんなとき、アニメ専門学校の学園祭を見たのだった。
夢に向かっている学生たちと、みじめなサラリーマン生活を送る私が、そして誰からも必要とされてない私があまりにも対照的だった。
たまたま、その日だけ定時上がりだったのだが、沈みゆく薄暗い夕焼けがまるで私の人生のように感じられた。
私は、自分のみじめさに泣いた。


そんなとき、司馬遼太郎先生の『戦雲の夢』を読んだ。


「あたりまえじゃ。落ちろとわしはいう。盛親どのだけではなく、世のだれもが、このような益体もない松につかまって苦しんでいる。手を離せば、なるほど谷底へ落ちよう。死ぬかもしれぬし、生きるかもしれぬ。
死ぬにせよ、生きるにせよ、人間さしたることはないと目ざめたとき、手を離す一大勇猛心がおこるのじゃ。手を離した瞬間、無碍自在の境地がひらけよう」


このときに、この本を読まなければ、私の人生は全く違ったものになっていたと思う。
私の人生は崖の上にのぼれる見込みがないくせに松にしがみついている人生だったのだ。
松を離してみようと思った。
崖の上にのぼれる見込みがない人生なら、フリーターをした方がマシという人生なら、フリーターをしながらマンガを描けばいいではないかと思ったのだ。
私は会社を辞めようと思ったのだった…。


つづく…

3


先日、司法書士の試験が終わった。
あれから、ずっと考えていた。

以前、仕事を辞めてまで同人に賭けたことがあった。
あのとき、同人と私の魂ともいえるメジャーリーグ以外の全てを捨てて同人に賭けたのだった。
だから、1冊しか売れないときもあった私がコミケで外周になれたんだと思う。

年を取ると体には贅肉が付いてくる。
それと同じで、あれこれと余計なモノを身に着け過ぎているのかもしれないね。
若い頃みたいにスパッと捨てないといけないのかもしれない。

おととい、たまたまyoutubeでこの曲を聴いた。
子供の頃に聴いた曲だった。
あのときは、こんなにいい曲だとは思ってなかった。

何もかもかなぐり捨てて、やるべきことをやらないと試験も受からないんだろうな。
精神状態ギリギリまで勉強しても、この曲を聴くと心が救われるような気がした。


明日、色々といらないモノを捨てよう。
あのときみたいに何もかも捨ててみれば、新しい世界が見えてくるかもしれないからね。

このページのトップヘ